疲れているのに眠れない?夜になると頭が冴えてしまう理由
日中はくたくたなのに、布団に入ると目が冴える。疲れているのに眠れない仕組みを、過覚醒の研究とあわせて解説。今夜からできる眠りへの下降ランプも紹介します。
著者 Kurt Woleret

私の体が得意にしている手品があります。一日じゅう、ガス欠寸前で走り続ける。帰りの電車であくびを噛み殺す。会議でぼんやりする。ほかの人が休暇を夢見るように、枕のことを夢見る。それなのに、ベッドに入って電気を消したとたん、脳が火災報知器でも聞いたかのようにパチッと目を覚ますのです。気づけば2019年の会話をリプレイし、来週の予定を高解像度で組み立てている。昼は疲れ切って、夜は冴えわたる。あなたもそうなら、どこも壊れてはいません。二つのシステムが同時に走っていて、勝ってほしくないほうが勝っているだけです。
「眠い」と「疲れた」は同じではない
ここが、多くの人がつまずく核心です。疲れたとは、体と心が消耗しているということ。眠いとは、脳が本当にスイッチを切る準備ができているということ。似て感じられますが、動かしている機構は別物です。睡眠圧は起きている時間の副産物として一日かけて積み上がり、それは本物です。でも、もうひとつのダイヤルがあります。覚醒度、つまり神経系の警戒レベルです。ストレス、締め切り、明るい画面、遅い時間のコーヒー、寝る前のスマホの無限スクロール。どれもこのダイヤルを上へ回します。そして厄介なことに、覚醒は睡眠圧に勝ちます。毎回です。十六時間分の疲労を抱えていても、警戒システムが「何か起きている」と判断すれば、灯りはつけたままにされるのです。
タイミングの落とし穴もあります。体内時計は覚醒信号を出していて、その信号はよりによって夕方から夜にかけて、自然な就寝時刻の数時間前にピークを迎えます。睡眠科学者は、このピークが落ち始める直前の時間帯をセカンドウィンドと呼びます。18時にはぼろぼろだったのに、21時にはなぜか元気で、深夜0時に裏切られた気分になるのはこのせいです。この夜の追い風を使って新しい仕事や新しいシーズンの一気見を始めれば、いちばん鎮めたいシステムに燃料を注いでいることになります。
くたくたであることと厳戒態勢であることを両立させたまま、眠りに審判を任せることはできません。勝つのは警戒のほうです。
過覚醒という問題
睡眠研究にはこの状態の名前があります。過覚醒(ハイパーアラウザル)です。RiemannらがSleep Medicine Reviews誌で発表した大規模なレビューは、数十年分の証拠をまとめ、慢性的な不眠は主に夜の問題ではないと結論づけました。不眠のある人は一日を通して覚醒度が高い。心拍は速く、ストレスホルモンの活動は高く、脳は睡眠中でさえ本来より忙しく働き続けます。つまり、23時の冴えた感じは気まぐれな不具合ではありません。一日じゅうアイドリングが高すぎた神経系が迎える、夜のピークなのです。
これを味わうのに、診断のつく不眠症は必要ありません。過酷な締め切り週間がひとつあれば十分です。体は一日じゅう弱い警戒モードに浸かり、そこへあなたは、頭が枕に触れた瞬間に時速百キロからゼロになれと注文する。無理です。人間の生物学はそういうふうにはできていません。睡眠はオフスイッチではなく、着陸です。そして着陸には降下が要ります。
何があなたを加速させているのか
対処法の前に、覚醒のダイヤルを押し上げている犯人を知っておきましょう。おなじみの容疑者たちを、私が自分の部屋で捕まえる頻度の順に並べます。
- 横になる直前まで働くこと。仕事のチェックだけでも同じです。脳には荷下ろし場がなく、一日分の荷物を一瞬で降ろすことはできません。
- 明るくて、速くて、面白い画面。問題は光だけではありません。コンテンツが脳の予測装置を回し続けることです。
- 午後遅くからのカフェイン。半減期が長く、本来感じるべき眠気のサインを静かに覆い隠します。
- リベンジ夜ふかし。自分の時間を取り返すために夜更かしするのは自由のようでいて、闇金のような利息を請求してきます。
- ベッドをオフィスにする問題。布団の中でメールを返すと、脳はマットレスを仕事の場所として登録します。
実際に効くこと
目指すのは降下です。完璧なルーティンでも、ウェルネス系インフルエンサーの四十工程の儀式でもありません。覚醒から薄明かりへの、ただのスロープです。就寝の三十分から六十分前に始めましょう。照明を落とす。仕事を閉じる。スマホを退屈にする。頭の中が騒がしいなら、紙に全部降ろしてしまいます。明日のタスク、心配ごと、何もかも。詩ではありません。荷下ろしです。
次に、体へ実際のシフトダウン信号を送ります。ゆっくりした呼吸は、私たちが持っているいちばん持ち運びやすい信号です。長い吐く息は神経系を休息の側へそっと押します。まさに動かしたいダイヤルです。4-7-8呼吸は堅実なテンプレートですし、深夜に頭の中で数を数えるのが億劫なら、Feelsyのガイド付き4-7-8エクササイズがテンポを刻んでくれるので、ただついていくだけで済みます。二、三分で降下を始めるには十分です。
目が何かしたがるなら、戦わないでください。筋書きのないものを与えましょう。ここでゆっくりした映像が本領を発揮します。自らの上に折り重なっていくテクスチャ、漂う粒子、なめらかで反復的なものなら何でも。私はまさにこのために、Feelsyのオートプレイモードを暗くしてナイトテーブルで流しています。雨を眺めることの映像版です。落ち着かない部分の脳を働かせておくには十分で、警戒する部分がつかめるものは何もない。もう一話だけ、と比べてみてください。あちらは正反対のことをするために設計されています。
もうひとつ、臨床家から借りたルールを。体感で二十分以上眠れずに横たわっているなら、起き上がりましょう。薄暗いところに座り、静かで退屈なことをして、本物の眠気が来たら布団に戻る。逆効果に思えますが、違います。ベッドは目を冴えさせて言い争う場所だと脳が学習するのを防いでくれるのです。
本気で向き合うべきとき
たまに冴えてしまう夜があるのは、人生というものです。でも、疲れているのに眠れない夜がひと月以上ほとんど毎晩続き、昼間が壊れ始めているなら、専門家に相談する価値があります。不眠症の認知行動療法(CBT-I)は標準治療とされ、多くの人にとって長期的には睡眠薬より効果があり、ここで話してきた過覚醒のループそのものに働きかけます。歯を食いしばって耐えても、賞はもらえません。
Feelsyはウェルネスのためのプロダクトであり、医療上のアドバイスではありません。ストレスや不安、睡眠の問題が続く場合は、専門家に相談してください。
参考文献
- Riemann, D., Spiegelhalder, K., Feige, B., et al. (2010). The hyperarousal model of insomnia: A review of the concept and its evidence. Sleep Medicine Reviews, 14(1), 19-31.
よくある質問
昼間は眠いのに、夜になると眠れないのはなぜ?
疲れていることと眠いことは、別々のシステムが動かしています。疲れは消耗のことで、眠気には神経系の覚醒レベルが下がることが必要です。ストレス、遅い時間の画面、カフェイン、寝る直前までの仕事は覚醒を高く保ち、高い覚醒はどれだけ疲れていても睡眠圧を押しのけます。必要なのは意志の力ではなく、意識的に作る眠りへの下降ランプです。
過覚醒とは何ですか?
過覚醒とは、神経系のアイドリングが一日じゅう高すぎる状態のことです。心拍が速くなり、ストレスホルモンの活動が上がり、脳が忙しく働き続けます。Riemannらの大規模なレビューによれば、慢性不眠のある人は昼も夜もこの高い覚醒を示します。だからこの問題は就寝時だけでは解決できません。日中のストレス総量を下げることが、夜が自分の面倒を見るのを助けてくれます。
眠れないときはベッドにいたほうがいい?
いいえ。二十分ほど眠れずに横たわっていると感じたら、起きて薄暗い場所に座り、静かで退屈なことをして、本物の眠気が来てからベッドに戻りましょう。こうすることで、脳がベッドをいらいらした寝つけなさと結びつけるのを防げます。横になって休むこと自体に価値がないわけではありませんが、長い目で見れば、ベッドは眠る場所だと脳に教えるほうが大切です。
寝る何分前に仕事や画面をやめるべき?
消灯前に三十分から六十分の降下時間を目安にしましょう。仕事を閉じ、照明を落とし、入ってくる刺激をゆっくりした、どうでもいいものに切り替えます。速くて面白いコンテンツは脳の警戒システムを回し続けます。それこそ鎮めたい相手です。ゆっくり動く映像のテクスチャや、4-7-8のようなテンポつきの呼吸法のほうが、もう一話よりずっと良い締めくくりになります。
眠れない状態はいつ受診すべき?
ひと月以上、ほとんど毎晩疲れているのに眠れず、昼間の生活に支障が出ているなら、専門家に相談しましょう。不眠症の認知行動療法(CBT-I)は標準治療で、多くの人にとって長期的には睡眠薬を上回る効果があります。たまに頭が冴える夜は普通のことですが、続くパターンには睡眠ハックの追加ではなく、本物の助けがふさわしいのです。

著者について
Kurt Woleret
Contributing writer
Kurt is a New York based writer covering the practical science of stress, sleep and focus. He is the resident sceptic of the Journal: if a technique cannot survive a crowded subway commute and a deadline week, he is not interested in it.
Feel it for yourself.
Feelsy turns reading about calm into practising it. Two minutes of a slow texture is often the whole difference.
関連する記事
睡眠夜の考えすぎを止めるには。頭が冴えて眠れないときの対処法
布団に入ると考えごとが止まらないのは、脳の癖であって故障ではありません。夜に頭が冴える理由と、思考を静めるための具体的なステップをやさしく解説します。
睡眠夜になると不安が強くなるのはなぜ?理由と、本当に効く夜の習慣
夜に不安が強くなる理由を解説。ホルモンのリズム、暗さ、気をそらすもののない頭が心配ごとを増幅するしくみと、やさしく効く夜の習慣を紹介します。
睡眠リベンジ夜更かしとは?疲れているのに眠らない心理とやめ方
疲れ果てているのに、寝ずにスマホを見てしまう「リベンジ夜更かし」。奪われた1日を取り戻そうとする心理の仕組みと、夜の自由時間をあきらめずにやめる方法を解説します。
睡眠Newコーヒーナップとは?昼寝の直前にコーヒーを飲むと目が覚める理由とやり方
コーヒーナップは、コーヒーを飲んでからすぐ20分だけ仮眠する方法。順番が逆に思えますが、カフェインが効き始めるまでの時間差がポイントです。仕組みと正しいやり方を解説します。
睡眠New枕が変わると眠れないのはなぜ?ホテルで眠れない「ファーストナイト効果」の科学
ホテルや旅先の最初の夜だけ眠れないのはファーストナイト効果。脳の半分が文字どおり見張り番を続けているせいです。仕組みと、よく眠るための対策を解説します。
睡眠寝室の風水と睡眠。ぐっすり眠れる部屋の整え方
ベッドの位置、片づけ、色と照明。風水が教える寝室の整え方と、静かな部屋について睡眠研究が語り始めていることをまとめました。